大学に入学するには、一般的にいえば、入学試験を受けなければなりません。文学部や経済学部の文科系の場合であれば、英語、国語、社会あたりが一般的で、国立大学になるとこれに加えて、共通テストなるものを受けなければなりません。
こうした入学試験を受けずに大学に入る方法は、あるのでしょうか。近年、入試の多様化ということで、一芸入試やスポーツ推薦、学校推薦、帰国子女特別入試などが花盛りです。
一芸入試というのは、珠算の全国大会で優勝したとか、ケン玉で日本一になったとか、特殊な才能が必要になります。また、スポーツ推薦というのも特殊な技能が必要になります。
学校推薦を受けるほど、高校時代の成績が良い人というのも、希な事です。誰にでもできるというものではありません。ましてや帰国子女などというのは、本人の努力でどうなるものでもありません。
つまり、これらの方法では、その恩恵にあたる人がごく一部なのです。一般的ではないのです。特殊なのです。
では、付属の高校や中学校から入るというのはどうでしょうか。この場合、確かに大学入試はない場合もあるでしょう。いわゆるエスカレーターというものです。しかし、付属の高校や中学に入るときに、きわめて難しい入試があります。付属の小学校の場合でも、やはり入試や親の面接があったりします。
つまり、こうした方法ではすでに激しい選抜が行われており、誰でも入れる気軽な方法では無くなっているのです。
ところで、なぜ大学に入学試験が必要なのでしょうか。大学で学びたいというのならすべての希望者に入学を認めればよいのではないのでしょうか。
まして私立大学の場合、授業料が大学運営の貴重な財源になっているのですから、大学経営の面から考えても希望者全員を入学させたほうが良いのではないでしょうか。
しかし現実には、すべての希望者を入学させている大学はまれです。その理由は大きくわけて2つあると考えられます。
1の理由は、かなりもっともな理由に見え、建て前としてはよく用いられる理由でもあります。しかし、「卒業できようができまいが本人の勝手ではないか。大学側が入学前に卒業できるかどうかを判定してしまうのはおかしいではないか。」という見方もできます。
2も確かに、もっともな理由であります。もっともな理由ではありますが、その気になれば入学を希望する学生をもっと受け入れて授業料収入を増やし、そのお金で教室や教員を増やせばいいのです。確かに人気のある私立大学ほど学生数が多い傾向にありますが、これも効率性の問題から、無限に増やすところまではいかないようです。
さて、通信教育の場合は、教室は必要ないですし、教員は通学生を教えるために雇用している教員を有効利用するため、2の施設や教育面の理由はなりたちません。
したがって、1の、卒業する基礎学力があるかどうかを調べれば、それだけで入学を許可する事ができるのです。
現に、通信教育課程には入学試験というものがありません。では、どうやって1の、卒業する基礎学力があるかどうかを調べるのでしょうか。通信教育部では、入学時の判定基準として、入学志願書と最終卒業校の成績証明書の提出を義務づけています。最終卒業校とは、高校、高専、短大、大学などで、たとえ中学卒でも大学検定に合格していればそれでも構いません。
入学志願書といっても、氏名とか住所を書くことができて、せいぜい「なぜ大学に入学しようと思ったのか」を書く能力があればよいのです。しかも、小論文といった大仰なものでなく、アンケートの類なのです。
成績証明書のほうも、主として取得科目によって単位の免除をするかしないかということに利用しているのであって、成績優秀な者を選んでいるのではないのです。
大学の通信教育課程に入学するためには、まず、入学志願書類を入手しなければなりません。(慶応大通信教育部03-3451-8890)入学志願書類を手に入れたら、最終卒業校の成績証明書を取り寄せ、必要書類を書いて、ポストに投函するだけです。
簡単です。
大学に入学するためには、入学金が必要になります。入学金、授業料、施設費などの名目で、初年度納付金は100万円以上。これに、入試の受験料が一学部あたり2万から3万円必要となります。
通信教育課程の場合は、どうなるのでしょうか。基本的には授業はありませんから、授業料・施設費は不要です。入試もありませんから受験料もいりません。通信教育課程で必要な学費は、入学金に相当する登録料3万円、授業料に相当する教育費7万円、補助教材費5000円、科目試験料3000円の計10.8万円です。これに入学時に必要な選考料1万円が必要です。
これは初年度の費用ですが、2年目からは年間7.8万円になり、テキストの配本が終わると、なんと年間5万円になります。
桁違いに費用がかからないことがおわかりだと思います。私も、数多くの通信教育生と話をしますが、学費の面での不満はまず聞いた事がありません。
いくら入試がなくても、どんなに費用がかからなくても、仕事をやめなければならないとか、支障が出るようでは、入学など考えものということになります。しかし、「通信教育」ということばから連想できるように、時間的な拘束が全くありません。朝勉強しようが、夜中に勉強しようが、あるいは半年ほど勉強を中断しようが、全くの自由なのです。
一般的にいって、大学は入学から卒業まで4年と決まっています。入学した年は1年生、次の年は2年生というふうに呼称まであります。
ところが、通信教育課程では、1年生とか2年生という表現はないのです。そもそも、4年間で卒業するということを前提としていないのです。したがって、かりに主婦が入学後半年で子育てのため、半年間勉学を中断してもなんの問題もないのです。だれからも後ろ指をさされる事はないのです。
通信教育課程では、「最低卒業年限は4年、最高で12年まで」と決めているだけで、その間にいつ卒業しても良いのです。しかも5年目からはテキストの配本がなくなり、年間5万円になりますから、経済的な面から言ってもあわてて卒業する必要がないのです。
したがって、入試がないかわりに一旦入学したら学校に追いたてられてひどい目に合うのではないかといった心配は不要なのです。仕事が忙しくなったら中断してもいいし、それで年間5万円ないし7.8万円が惜しくなったら、休学手続きをとることもできるのです。また、学習を中断したからといって、教授に心配されていらぬお世話を焼かれるという事もありませんし、まわりの学生から後ろ指をさされるといったわずらわしさもないのです。
すでに、大学または短大を卒業している場合は、さらに短期間で卒業する事が許可されています。一般教養科目が一部免除され、最短で2年半から3年で卒業が可能となります。
4年制大学を卒業している場合は、最短で2年半になります。これは、一般教育のうち、英語は免除されないので、半年間はその勉強をせよということです。
大学の通学課程の場合は、編入学といっても試験がありますし、また「いつでも」「どこでも」「誰にでも」試験が受けられるわけではなく、欠員が出た場合に限られることもあります。通信教育課程のばあい、編入学についても「いつでも」「どこでも」「誰にでも」といった3原則が通用するのです。
近年、通信教育の入学生に大学卒業の資格で入学する人の割合が急速に増えています。他の編入試験と違って、間口が広いところに人気の理由があるのです。
学生になるとどんないいことがあるかというと、まず学生証がもらえます。この学生証は何に使えるかというと、いわゆる学割に使う事ができます。つまり、学生になれば、映画館や美術館が大学生料金で入れるのです。大学の行事の際にはJRが学割料金で乗れますし、所得によっては税金が優遇されます。
またこの学生証を見せれば、三田(東京)や日吉(横浜)にある大学図書館が自由に閲覧できます。無事卒業すれば、永久に利用できます。(年間500円必要)他にも「学割のきく店」ありませんか?探してみてください。
慶応大学は、文・経・法・商・医・理工・総合政策・環境情報学部の計8学部があります。通学課程であれば、どの学部にも入学できるのですが、通信教育課程は文・経・法の3学部だけです。決して医学部に入ろうとは思わないように。商学関係は経済学部にカリキュラムが含まれています。
経済学部は大きく分けると、経済学関係と商学関係の科目があるのですが、入学時にどちらかを選択する必要はありません。入学したあと、経済学関係を中心に勉強するか、商学関係を中心に勉強するかを決めて科目を選択すればよいことになっています。
それに対して、文学部と法学部は入学時にコースを選択することになっています。文学部は哲学関係、史学関係、文学関係の三コース。法学部は、法律コースと政治コースです。
参考までに、文学部の哲学関係のコースの専門科目を掲げます。(1993年度)
西洋哲学史、論理学、倫理学、現代倫理学の諸問題、日本美術史、社会学史、社会心理学、都市構造論、心理学、教育学、教育心理学、教育史、教育思想史、教育社会学、心理・教育統計学
通信教育で人気の学部はどこでしょうか。数の上では圧倒的に文学部に人気があります。文学部はもともと女性に人気がある学部ですが、通信教育は女性の割合が多いため、結果的に文学部に人気があるといえます。
また、文学部は他の学部に比べて卒業率が高いため、とくに学部にはこだわらないという人が文学部を選択する傾向もあります。逆に経済学部は卒業率が低いため、学部にこだわらない向きには敬遠される傾向にあります。
しかし、結局のところ少しでも興味のもてそうな学部を選択することが卒業への早道です。まして、入学後に学部を変更するなどというのは苦労を買ってでるようなものですから、できるだけ避けるようにしましょう。
一般の大学であれば、ほぼ毎日のように授業があるため、札幌から東京まで通学することはできません。(ま、例外はどこにでもありますが。)
しかし、通信教育課程の場合は、大いに考えられるのです。しかも、郵便料金は全国一律ですから、全く同じ条件で学ぶ事が可能なのです。いやむしろ恵まれている場合もあるほどです。
私は兵庫県の姫路市に住んでおり、首都圏以外のいわゆる地方の入学者です。しかし、科目試験(単位をとるための試験)は神戸や姫路で開催されるし、スクーリング(面接授業)は夏の盆休みを利用して上京するということで、なに不自由なく勉学することが可能でした。
とくに地方の試験会場は受験者が少ないため科目試験終了後、大学の教職員と懇親会(要するに飲み会)をやったり、教授の講演会をやってもらったり、アットホームな交流が可能でした。
というわけで、慶応の通信教育課程の場合、北は北海道から南は九州・沖縄まで、全国に学生がいて、学生の中でも関東地区以外の学生がかなりの存在感をしめています。ちなみに、関東地区とそれ以外の地区の学生の比率は6対4ぐらいです。
思いつくままに慶応大学の通信教育課程について書いてきました。ここまで読まれて入学してもいいなと思われた人もいるでしょう。いますぐ入学手続きをしましょう。
いまの仕事や日常生活に時間的にも経済的にも大した影響も与えず、勉学をとくに強要されるわけでもなく、必要に応じて学問に親しむことが可能です。入学手続きを済ませれば、テキストが送られてきますが、とりあえずテキストをパラパラと繰ってみるだけでもいいではありませんか。それで興味が湧いてきて、単位をとっていけば、卒業資格を得ることも可能なのです。
卒業を期待して入学すると、卒業できなかったときに失望が訪れますが、期待せずに入学すると、卒業が楽しみになります。
どんなに難しい入学試験を突破したところで、大学に入ったとたん勉強をしなくなって中退する人だっています。勉強、とくに受験勉強が嫌いでたまたま大学に行かなかった人が、大学教育や学問と無縁でいる理由はありません。
就職を考えて経済学部を卒業したが、本当は文学をやってみたかったという人もたくさんいるでしょう。そういう人でも、いまの仕事はそのままで、文学を勉強することが可能です。
慶応には、文、法、経済学部の3学部しかありません。また、経済学部では近代経済学が中心です。地方スクーリング(面接授業)もありません。関西の人であれば、東京の大学というのも何かと不便な場合もあります。そこで、慶応以外に通信教育を行っている大学があります。